ビニル傘
透明なビニル傘めがけ
たくさんの水滴が放射される
天上では誰が
号令かけている
小鬼か、そこはお前の居場所じゃないよ
世界中の女の涙が
ビニル傘に
降り注ぐ
口に入ったら
しょっぱさと苦さと
ほんのわずかな人生の味
世界中の男の涙は
いらないよ
それは重たすぎて
ビニル傘を突き破り
私の身体に楔となって
突き刺さる
世界中の母の涙は
ビニル傘を溶かして
皮膚を越え骨に沁みる悲しさ
心がしとしとと
土に沈み込んでゆく
世界中の子供の涙は
ビニル傘を彩る
赤
黄色
青 緑
茶色 黒
ドロップの缶から弾けるように
感情の色々を
映しだす
すすけて汚くなったビニル傘
濡れたまつ毛の匂いがする