2012-12-01から1ヶ月間の記事一覧

鰓呼吸

ベルが鳴り 今 飛行船は出発する昨日の私を乗せて今の「めざめ」を捜す旅に暗い後悔のような空をかき分けて母のお腹の中の薄桃色の靄の中へ私は膝を抱えて丸くなった夢心地の気体で包まれ知らない内に 鰓呼吸 ぱふぱふ すてきに 鰓呼吸 ぱふぱふ

真珠貝を採るために

海女になって潜るのです真珠貝を採るために肺活量は生きるカいつも新しいものと取り替えてねいきるいきるいきるしなびたら窓からポイ捨てだよ貝が腐ったらとても臭いからあたらしい国のあたらしい政府とやら今吐いた言葉でラッピングしてあげる 深く深く潜る…

悲冬

すきな人が因縁だか命運だかわからないが無惨に荒々しく渦に巻かれて連れて行かれたよ 今でも溶け出したつららからすすきの穂先から霜柱の陰から無音の声が こんなにも聞こえるというのに絞れた胃の腑からこぼれ落ちる液は身体全体を爛れさせ喘ぎながら 氷原…

のっぺらぼうの神様

金属質の子の泣き声が 冷ややかな夜の闇を切り裂く私のはんぺんの心が縮こまる 耳の筋肉がぴくっと反応する顔のない子の身を案じる自分を守る術や力を持たない 赤むけしたこうさぎを 守って下さいと どこにいるかわからない神様に お祈りしたりするこうさぎ…

北の果てで光っていた

氷の粒が風に踊って 煌めく打ちつける空気の塊に 耐えながら 北の果ての海岸に屹立していたもう随分長い時間生きてきた 良い事 手のひらですくえるくらい 悪い事 うんざりするくらい最北端で寒さに萎えた私は しおらしいもう人間を辞めてもいいのではないか…

親と子

懲らしめるために 大きな白い袋に入れたよ獣は 子を巣穴に待たせ 冬山を果てしなく さまよいさまよう 亡霊のように 餌を子の胃袋に入れる為に 女は 袋をのぞきこんで 慌てふためき 慌てふためき 命が消えた身体を ひしと 抱きしめ 涙にくれたたった1年に し…

生きのいい魂になる薬

ある日 だらだらとアーケード街を歩いていると 間口の狭い奥行のある店先で ロの裂けた女が 「生きのいい魂になる薬はいらんかね」 と叫んでいた どうでもよかった私は ありったけの金を払って 緑色のビンに入った黒っぽい液体を買った家に帰って布団を敷い…

老健で

厳しい訓練で必死な時間 諦めきれずに熱中してる孤独に静かだけど 額の汗 流れ落ちて 彼は 下腹に渾身を燃やして 皺だらけの手でバーを握り締め 1歩1歩 歩む 1歳の赤子になって意識朦朧から 生まれ落ちたとき 彼の右半身は物に成り下がった夢を放り投げ …

聖なる夜に

聖なる夜に タバコをくわえ 人影まばらな パチンコ屋で 回らぬ釘に悪態つき聖なる夜に 昔々は 幼稚園で人形を抱いて マリア役をやったものだが聖なる夜に 何とか稼いで シャンパン買うぞと 血走った目で銀玉追って 嗚呼、地雷原かな我が人生 勝負師 メリーク…

詩人ではありませぬ

私は詩人ではありませぬ どうしても どうしても 言葉を吐き出し 肉体を囲む穀のように 築き上げてしまう 蚕なのです私は詩人ではありませぬ おみなえし おみなえしと 言葉を風に遊ばせ 少年の頭のリンゴに 矢を当たりそこねる 飢餓海峡なのです

編み物

あむ あむ あむ コトバで編み物しましょあむ あむ あむ 大好きなコトバは 沢山散りばめましょあむ あむ あむ 色々な風合いのコトバを 何となく使って 自由気ままが信条ですあむ あむ あむ 愛しいあなたに 羽のコトバのかたびらを作りましょうかあむ あむ あ…

夏休み

気がついてみると家に1人だった 蝉の声が ミーン ミーン ミーン夏の強い日差しと すっぽりと家を包む濃い陰 僕は禁じられているあの事を したくて 両手をポケットに突っ込んだ仏間に飾られているご先祖様達が 怖い目で睨んでいるような気がして 襖をぴしゃ…

時の匂い

時は通り過ぎるときふっと匂いたてる ある時は 硫黄の匂い ある時は 湿気の匂いある時は 生々しい血の匂い ある時は クレゾールの鼻腔を刺す匂いある時は 肉の匂い そしてある時は 彼岸からの香の匂い時は匂いながら崩れ落ち 肉体も精神も巻き込んで 強固な…

天女とヤドカリ

天女は 木の技に忘れ物をしたようだったするすると降りてきて 松の枝に 陽炎のように 引っかかっている薄物を 真白き指先で 熱心に ほどいて片足を傷つけたヤドカリと眼があった ヤドカリは卑屈そうにコソコソしていた 背負っている貝殻に 満足していなかっ…

食べる

はむはむと噛む ごくんと飲み下す そのことをしながら 匂い 味(しょっぱさ、甘さ、苦さ、辛さ、酸っぱさなど) 舌触り(ざらざら、なめらか、どろどろ、とろとろなど) 噛み心地(こりこり、ぷちぷち、ぷりぷり、まったりなど ☆但し、まったりは味、舌触り…

エウリディケ

腐りゆくこの世で リカバリー号に乗って まぶたのない瞳で 凝視している 嗚呼 エウリディケよ君の金色にゆるくほどける髪が ポイポイと空中に飛びかう 赤ん坊を受け止める鳥は翼を燃やしながら カウカウと鳴く 君の赤い涙は とめどがなく 流れ続け 白いドレ…

洗う

ほとばしる水流 水滴をピンピンとばして この世を包み込むくらい 激しく泡立たせて 洗う 洗う べとべとに油にまみれた皿を コップを指先はたちまち冷えきって しびれたようなマゾに染まって洗え 洗え 君を 僕を 僕たちの汚れた欲望をあたたかく開ける明日に …

マイホーム

今日も多摩川に空っ風が吹く橋桁に寄りかかるように ダンボールの工作 マイホームバタバタ 音を立てるここにたどり着いた時は 住み家なんて いらないと思っていた 干からびたねずみのように 野垂れ死のう 心の奥深くに 楔を打っていた男の心は黒ずんでいた …

トマト  ーアンテナびんびんナイト即興の詩ー

皮がところどころ破れ 熟れた赤い肉がのぞいている つぶつぶの種も見える荷物をかき集め 可愛がっていた木を抱いて 疾風のように出て行った彼女「もう一緒には居られない」と言っていた 理由を聞く暇も 与えてもらえずにキッチンには赤い実一つ皮がところど…

有機溶剤ーアンテナびんびんナイトお題の詩ー

細胞の1つ1つに染み渡り じわじわ じわじわ 溶かしてゆく私 好きなの あの匂い 危険な感じが気体となって 鼻腔に吸い込まれると じわじわ じわじわ 犯してゆく私 取りつかれたの あの感じ どうしよう人体の隅々にまで いきわたり 歯を溶かし 脳を溶かし 人…

高血圧

なんか変だ 後頭部に何かか張り付いたように重い 身体が今にも破裂するようにパンパンだ しまい込んでいた血圧計を出し測った今までで最高値 値が信じられず5回測った今日はやるべきことがある医者に行く時間はない胡麻麦茶を片手に現場に向かった やるべき…

コスモスと柴犬と私

コスモスに鼻をうずめ込んで 柴犬は何か考え込んでいた しばらくそうしていたが はっと顔を上げ どこかに向かって走り出したそれを見ていた私は やっぱりコスモスの匂いに身をうずめた 生き方を さばき方を すがり方を 這いつくばり方を私という血の流れを …

リバーシブル

小利口より馬鹿がいい 後付けで人間が作ったものより 生まれたまんまがいい生け花はあまり好きじゃない 葉をどんどん切り捨てて 蕾もどんどん切り捨てて 作り上げた人工美 脳が作った勝手な仕業埃をかぶって いろいろな匂いの 風に揺れながら咲く 道端のたん…

鍋にまつわる記憶

あれとこれとそれ 煮たらきっとおいしいね 彼女はそう言った豆腐は煮すぎて ふてくされる 魚は底の方で ちりぢりになる 野菜は深緑に 泳ぎ回っている つみれは何か秘密を 隠そうとして押し黙っている 牡蠣は物陰にひっそりと 隠れているぽん酢にはやっぱり …

再生

都会の地下通路に 膝を抱えて さなぎのように 眠る雑踏はまるで異空間にいるように 気配さえも感じられない放っておいて このまま干からびさせてくれうとうとしていると 誰かが僕の身体にドスンと 片目で見ると ひよこ売りのおばあさんが すっころんでいる二…

伝説はいらないんだ -勘三郎さんを懐ってー

同年代の 息せききってひたすらに 疾走する ランナーが 向こう側へ行つてしまった創造者であり表現者だった 開拓者だった 戦士だった 汗の綺麗な人だった 伝説になんてなってほしくなかった 流れ落ちる 血の温かさを感じる生き様を 何時も「どうだ!」と 見せ…

小川

小川から「お」をくぎってとりだし小川から「がわ」をくぎってとりだし足元にそっとおく心に小さな蝋燭がともる 光をつかんだと思ったのだがそれは魂だったのだ握り込むとそれは石のようで わたしの中の水は温まらずに冷たいままぞっとする死人感 小川が流れ…

未明

日が昇る少し前に 心を決めておこう 今日を生きる覚悟を何が起きるかわからない 有象無象のこの世に 漂っている自分 生きる覚悟 死ぬ覚悟 普通に過ごす覚悟日が昇る少し前に 心を削ぎ落とし 体を磨き 凝縮した今を 生き延びる準備を

星の降る野に

星の降る野に 骸のように 静かに身を横たえる疲れきって 汚れきって 何の希望もなく 欲望をもたげる力もない満天の星の その向こうに 何があるのか 彼は薄れゆく意識の中で 思っているそこには祭壇があって 力と自信と野望に満ちた かつての彼の遺影が 飾ら…

バランス

さなぎが泣いている シノシノとあの方でさえ砂糖のような うそものをまき散らされてバランスって命のようでな 鉈はしまっておくがよい