夏休み

気がついてみると家に1人だった
蝉の声が
ミーン ミーン ミーン

夏の強い日差しと
すっぽりと家を包む濃い陰
僕は禁じられているあの事を
したくて
両手をポケットに突っ込んだ

仏間に飾られているご先祖様達が
怖い目で睨んでいるような気がして
襖をぴしゃりと閉めた

僕は あの事をしたくて
見透かされているような気がして

母のいないキッチンの
冷ややかな床に横たわり
唇を噛みしめたまま
黄ばんだ天井を見つめていた

蝉の声が
ミーン ミーン ミーン

気がつくと僕はこの世に1人取り残されて
あの事から逃げられずに
キッチンの床に
磔になっていた