時の匂い

時は通り過ぎるときふっと匂いたてる
ある時は 硫黄の匂い
ある時は 湿気の匂い

ある時は 生々しい血の匂い
ある時は クレゾールの鼻腔を刺す匂い

ある時は 肉の匂い
そしてある時は 彼岸からの香の匂い

時は匂いながら崩れ落ち 
肉体も精神も巻き込んで
強固なコンクリートになり
静謐の中で忘れられた固体となる

時折 寂寥の振動が
深い深い 亀裂をつくる