マイホーム

今日も多摩川に空っ風が吹く

橋桁に寄りかかるように
ダンボールの工作
マイホーム

バタバタ 音を立てる

ここにたどり着いた時は
住み家なんて いらないと思っていた
干からびたねずみのように 野垂れ死のう
心の奥深くに 楔を打っていた

男の心は黒ずんでいた
男の目には何も写ってなかった

海の目をした優しいおじいさん
食べ物とダンボールをくれた
張りめぐらしていた膜なんてなきがごとく
ずんずん近寄ってきた

彼は指導官のように
てきぱきと教え
男は言われるがままに
家を建てた

今日も多摩川に空っ風が吹き
男の心に風が吹き
男の目には川景色

マイホーム
バタバタ 音をたてる

この世にかさぶたのように
ひっついてみるか

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12月14日夜
高円寺アローンで青木律さんの一人芝居「蝉」をみました。
ステージから押し寄せる波を、大切に持って帰ってきて書かせて頂きました。