月の光

トントントン

萎びたきゅうりの漬け物を薄く刻む

想いが目を塞ぎ

閃光の様な痛みが走り

指先に盛り上がる赤い玉を

舌ですくいとる

…広がる無機質の味

 

もしかしたら 裏切られているかもしれない

 

痺れている頭の中

もつれたグレーの糸が

口から飛び出ていきそうで

慌てて手で塞いだ

 

月の光を写す 薬指の輪の重み

 

何も感じていない私の周りで

ぶーんと唸るハエを

インクの匂いのする新聞で

バシッと叩き落とす

こびりついた死骸は

この世に何を 焦がれていたのか

 

今をたぐっていくと 明日につながるのだろうか

 

ねっとりとした夜の裂け目に

身を投じようとする

尾っぽを引っ張られ この世に引き戻される

骨から身が剥がれるくらい苦しくても

あなたがいないよりはましだ

 

立ち昇る情念が渦巻き

夜空の月を 覆い隠す