砂山の手

公園には誰もいない

砂場に小さな山があり

そこから女性の手がはえていた

もしかしたら誰かを呼んでいるのかもしれないが

あまりにも白く美しい手だったので

考えるより先に 握ってしまった

それは砂の中に引きずり込むように

無機質に冷たく魅力的だった

あたかも 私を捕らえようと

しているみたいに

指先が狙っていた

私は伏せ目がちにやり過ごして

早足で家に帰り

鍵を掛けた

あくる日 公園に行ってみたら

砂山の手はもうなかった

安心するのと同時に寂しかった

人にたずねたら カラスがくわえて行ったそうだ

カラスの暴挙に 嫉妬する自分を感じた

寧ろ、砂の中に引きずり込まれたかったのに

臆病者らしくほぞを噛んでいた