花曇り
花冷えの夜
肌寒くて
男が忘れていったシャツの
汗臭い匂いを嗅ぎながら
眠った
目覚めると
目尻から頬へと
流れの跡
暖かい湯で
なかった事にして
白い手で1秒1秒紡ぐ
それは濃密なようで
陽炎のようでもあり
深緑が青ぎった陰を作り
照りつける太陽が
焦げ跡を残していく
茶や黄色の葉っぱが
癒やすように覆い隠して
しんとした眠りの季節に
潜り込んで 膝を抱える
再び
桜の花びらが
道を埋め尽くす頃
例のシャツを
嗅いでみたら
すえた匂いがした
思わず
放り投げた