低地

川沿いの草ぼうぼうの土地に

濃い霧が流れる

時折 ぴかっと光るのは 行き先を見失った魂か

 

彼岸花が風になびいて 祈りを呟く

まるで救われない者の 末路を案ずるかの様に

時折 泣いているのは 憐憫の針で刺されたから

 

壊れかけの段ボールのなかで 子猫がミャーミャー泣く

生きているよ ここにいるよ

 

あちらこちらに  積み上げられた小石の塔

ビニール袋が引っかかって バサバサ音をたてる

 

別の世界行くのを ためらっている魂も

河岸に捨てられた巻き貝の中へ

しゅっと潜っていった

 

浮腫んで膨張した 茄子色の夜の闇が

全ての上に重く 覆い被さって  

 

かすかに聞こえてくる 子猫の声

助けて…助けて…