五月の風

五月の風の国
青々しい芝を
蹴散らしながら
駆け抜ける2才馬
艶やかな黒い肌
しっかり引き締まった体は
鋼のように光り
草の匂いがする
これから そうすべてはこれから

あれから10年
毛並みは艶を失い
輪郭は緩やかになった
しかし彼の歩いてきた道には
汗と血と勝利があった

もう荒れ狂う心は
ひっそりと薙いでしまった

五月の風を切って
彼のDNAが駿馬に宿り
艶やかに走っている
命のときめきを
繋いで行く

明日へ