魍魎の匣

ひとひらの雪をすくい
うなじにあて
じゅうと音が空に響き

鬼に賄賂をわたした
後ろめたさで

自分の形を
しばれる夜に
こっそりと隠そうと
小さく丸くなる

いにしえの卑弥呼
朝靄に紛れ
石の斧を振り下ろし
その屍を
傍らに
夜毎子守歌を歌ったという

わたくしは
魍魎の匣

露わにしては
いけない思いを
朝方の
藤色の空気に
流してながして

ただれた朝焼けに
膨らみかけた下腹が
疼いた