夜の麒麟

真夏の寡黙な夜に

熱が流れる

 

溶けていく 身体

震え続ける こころ

 

止まってしまった時計の針

塔のように象徴化した

じぶん じぶん 麒麟

 

麒麟の涙は赤く悲しくて

砂漠のようなシーツに 赤いドットを落とす

 

記憶装置を爆破します

 

なかった事にしたい

ドームの中に逃げこむ 麒麟

臆病すぎる麒麟

 

淵の近くには行ってはいけない

覗き込むと ほのかに光る深い穴に

吸い込まれてしまうから

 

持ち重りのする

じぶんのカラダ

いらない気分が漂う

魂だけ薄くふわっといられたら

 

翳った月に照らされた

見つけてはいけない絶望

身体の中で絶叫する

じぶん じぶん 麒麟

 

 

 

木村花さん

あなたのニュースを見知った時から

心がギュッと鷲掴みにされ

目が離せなくなりました

 

とても強くみえる所と

脆いところをあわせ持った不器用な人間として…

 

人に見てもらいたい心と

人から愛されたい心と

攻撃されたら、すぐに血だらけになる繊細な心を持って

 

まだまだこれから、成長できる可能性

を抱えた弾力のある無垢の魂を持って

 

あなたの雄叫びを聞いて、必殺技をみて

生きているつやつやの姿を

見たかったな…

 

悲しいです。

 

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月の光

トントントン

萎びたきゅうりの漬け物を薄く刻む

想いが目を塞ぎ

閃光の様な痛みが走り

指先に盛り上がる赤い玉を

舌ですくいとる

…広がる無機質の味

 

もしかしたら 裏切られているかもしれない

 

痺れている頭の中

もつれたグレーの糸が

口から飛び出ていきそうで

慌てて手で塞いだ

 

月の光を写す 薬指の輪の重み

 

何も感じていない私の周りで

ぶーんと唸るハエを

インクの匂いのする新聞で

バシッと叩き落とす

こびりついた死骸は

この世に何を 焦がれていたのか

 

今をたぐっていくと 明日につながるのだろうか

 

ねっとりとした夜の裂け目に

身を投じようとする

尾っぽを引っ張られ この世に引き戻される

骨から身が剥がれるくらい苦しくても

あなたがいないよりはましだ

 

立ち昇る情念が渦巻き

夜空の月を 覆い隠す

 

 

送られてきた物

‪送られてきた黒い闇に‬
‪怯えながら銀色の剣をつく‬
‪盲滅法に‬
‪人類への呪いを解く‬
‪その為に‬

 

‪我が身を‬
‪投げ出せずにいる

痺れる様なジレンマ‬

 

‪リスクと希望が
‪おとをたてながら‬
‪頭の中で戦っている‬

 

‪これは幻影ではなく、現実なのだ‬

キース・ジャレット

ひょんな事からキース・ジャレットの1975年の完全即興の「ケルンコンサート」を手に入れた。

何という透明感!即興とは信じられぬ内容だった。説明文をよく読むと、完全とは程遠い状態のグランドピアノが使われていて、またキースの体調も睡眠不足と過労で酷かったそうだ。

なのに、この透明感。

ずっと前に詩の朗読の背後で部分的に、使ったことのあるキースの「メロディ アット ナイト ウイズ ユー」も大好きだけど、ケルンコンサートも大好きになった。でも、透明だけれど、山あり谷ありいろいろなドラマが訪れるから(同じパターンを繰り返して、音が降りてくるのを待ってる時もあるし)聞く方もあんまり疲れている時は避けたい。

「メロディ アット ナイト ウイズ ユー」は同じ透明さを持ってるが、楽〜に聞ける(まぁ、即興じゃなくて、既存の曲であるし。)

キース・ジャレットが年取ってから、慢性疲労症候群になってしまったのも、即興演奏を沢山やって、あまりにも精神を研ぎ澄ましすぎたせいも、あるのではないかと思う。

但し、またまた大好き💕なビルエバンスのように、

麻薬にのめり込まなかった(逃げなかった)ところは、人として素晴らしいし尊敬できると思う。

暇なので、感想を書いてみました。

新型コロナよ、頼むから早く去ってくれ…

新型コロナ

 先日、いつもお世話になっている(私は2か月に1度詩の朗読ライブをしている)ライブハウスに、本当に辛いメールを送った。

「4月の出演は見合わせたいと…」

 

 それと言うのも、私は医療従事者で、勤め先の院長からの訓示があったからだ。「くれぐれも、不要不急の外出は避けるように。もしスタッフから新型コロナ感染者が出た場合、クリニックは2週間閉鎖される。その分の損益2億円は、最初の感染者に払ってもらうぞ。払えなければ、ずっと只働きだぞ」と。完全にパワハラandモラハラである…

 

 後から、院長は「冗談だよ」と言っていたが、私には100%冗談とは思えなかった。私は定年の60才をとうに過ぎている。今までのつながりで、クリニックにパートとして、雇ってもらっている。この弱い立場でもし第一感染者になったら、勤め続けることはまず無理だろう。整形外科の仕事を気に入っている私としては、本当に辛いことだ。最近自分の身体の力に、自信がない事もとても寂しい。 

 

 3日間考えに考えて、ライブハウスに連絡した。

今でも心がとても痛い。

なんか自分が保身的な自己中人間になったようで…

 

 新型コロナウィルスが心底憎い。

そして、早め早めに対策を立てなかった、政府がうらめしい…今更マスク2枚もらったって!

 

 

 

箱をかぶる

自称いい人たちに

善意のおせっかいを塗りたくられ

毛穴を全部塞がれて

息も絶え絶えとなった私が

ビルとビルの隙間でへたり込んでいると

とても自然に箱を被った人が

私に箱をくれた

 

試しにそれをかぶってみた

 

薄暗い空間は

私をなだらかにしてくれる

 

箱はいい具合に目のあたりに穴が開いている

 

箱を被った私を見ると

行き交う人は奇異な不都合を見せつけられたように、

目をそらす

それがまた何ともいえず、心地よいのだ

 

普通に暮らしているという欺瞞に

漂い、満足の笑みを浮かべる一般人

その固まりと段ボール一枚隔たってるというだけで

こんなにも、安心するのにびっくりする

 

大学になど、戻るつもりはなかった

もうあの幼稚な有象無象が集まっている

大学になど

 

期待していたのだが…あれが日本で最高の大学だなんて、くだらなすぎる

 

思い出してみれば、小学生の頃から

他の人たちと隔たっていた

卵膜のような意識の壁によって…

大きくなるにつれ

その壁は薄くなり続け、大学に入る頃には

それは他人の善意で、いとも簡単に破られた

悪意より善意の方が無造作に放たれ、ずっと威力がある

 

私は食事と用を足す以外は 箱をかぶり

橋の下、ビルの陰、ガードレールと公衆便所の間などに潜んでいた

 

私の狭いアパートはそのままにしておいた

家賃は地方都市に住む両親が 勝手に息子に夢を描き

せっせと教師の仕事をし、振り込んでくれる

 

最初のうちは定期的にアパートに帰り

風呂に入って着替えていたが、

きれいすぎるとかえって目立つので

だんだんルーズになっていった

 

ゴミの近くに潜み、一体化して身を隠す私は

意識もだんだんそれに近づいて行った

 

食べるものも拾ったもので構わなくなった

でも、「私は ホームレスではない、社会の観察者だ」

と自負していた

いつかこの体験について論文でも書いてやろうと

思っていた

 

ある日、あまりにも頭のてっぺんがかゆいので

洗髪しようと思い、アパートに帰った

段ボールを取ろうとしたが、頭のてっぺんがくっついている

髪が汚れてこびりついたのだと思い

ハサミで髪を切ったが箱は取れなかった

よくよく指で探ってみたら、箱と頭皮が結合していた

 

この箱がボロボロになったらどうすると、

一抹の不安がよぎったが、それはその時に考えればいいと

楽天的に変わった自分に、驚きを感じた

 

ある早朝、ゴミ置き場の端で うとうとしていると

遠くから近づいてくる怒鳴りあう声が 耳に入ってきた

頭は覚醒しているが、体が動かずのろのろしていると

チンピラは息を切らして、私のすぐ横に倒れこんだ

追いかけてきた同類の男が

「この野郎」と言いながら

銀色に光る手を振りかざした

と、下腹のあたりに鈍痛を感じた

その痛みは同心円を描くように、体全体に広がっていく

ぼやけてきた視界の隅に、隣に倒れこんだチンピラが

身をかわして 走り去っていくのが見える

それを追いかけていく銀色のナイフを握った男

 

私は,私は、腹から血を流しながら倒れこんでいる

 

悪意もじつに無造作で 威力があるなぁと

薄れていく意識の中で 考えている